4月の読書会 118回 「めぐる季節を生きて」宮尾登美子・著`02講談社

  (愛蔵版}というだけあって白椿の美しい装画・佐藤太清氏作である。
 茫々三十年の歳月を{書くことは生きること}として歩んで来られた
 遠く長い道のり、あふれる想いを胸にただひたすら書き綴る。
 <女の暦>、<女のあしおと>、<花のきもの>の3章からなる1冊。
 そこには私たちそれぞれの原風景といいましょうか参加者ひとりひとり
 がふるさとや幼少期を過ごした地方の言葉や習慣、しきたりなども
 重なる部分が沢山書かれていて{なつかしかった!}{そう思った!}
 {そのようにした。}と言わしめた。作者の宮尾さんは四国の土佐と
 いう特異な地方の出身と考えるがそうではないのが不思議だ。それは
 日本の原風景とでもいえばよいのか。フリー百科事典の(宮尾}の項を
 コピーして参加者に配布したがそれによると受賞歴と主な作品とが
 一目瞭然だ。彼女の出目から題材を採った作品がおおいが自伝的四部作
 といわれる「櫂」「春燈」「朱夏」「仁淀川」は土佐で芸妓娼妓紹介業
 を営む生家と複雑な家庭事情への劣等感から血のにじむような思いで
 書いた作品であろう。1979年に「一絃の琴」で第80回直木賞を受賞する。
 「宮尾本 平家物語」を執筆のため北海道伊達市に住まわれたが今
 そこは宮尾登美子文学記念館になっている。過去の新聞で伊達市の位置
 関係や福祉に手厚い住みよい街であるとの情報をみなさんに見ていただ
 いた。<花のきもの>の章がとても印象的でよかったと思うが作中
 (ばら)がきらいだったはずの宮尾さんのお父さんの大切にしていた
 のと宮尾さんの大好きな(ブラックティ)が載っているバラ図鑑を
 参加者の中のおひとりが持ってきてくれた。全員感動の一冊だった・
 三つの章は独立して講談社文庫にそれぞれ出ていたが今はもうない。
 愛蔵版の単行本もやはりもうない。